経験と記憶 (リサーチにおいて)
"経験と記憶"の違い
これ、リサーチの視点としてもとても重要だよ。≫ダニエル・カーネマン: 経験と記憶の謎 | TED Talk | http://t.co/tU6kU7NRhA http://t.co/9ymDKG2aED
— Idenarix (@Idenarix) 2015, 10月 11
少し長めの動画だけど、人はその時に直面する経験と、後になってどのようにその経験を捉えているのか、と言う記憶は、実は同じではない、という行動経済学の理論に関することをダニエル・カーネマンという有名な(知らなかったけど)先生が説明してくれてる。
この中で出てくる痛みに関する経験と記憶の乖離も面白いなーと。
リアルタイムデータとリコールデータはまったく別のもの
この、経験と記憶と言う枠組みで我々のリサーチデータを見てみると、リアルタイムに聴取するデータと、リコールさせて聴取するデータが異なる可能性があるってことになるのかな。
実は実際に、ある実験的な調査で、このリアルタイムデータとリコールデータが異なるんじゃないかって可能性があるのを発見した事があって、リアルタイムとリコールの乖離がずーっと頭の片隅にあったので、このダニエル・カーネマン先生の話もとても興味深かったのだと思う。
その時とるべきデータは、その時とるべき
この偶然見つけたっぽい傾向は、簡単に言うと、どうやら、リコールデータにおけるヒューリスティック(ダニエル・カーネマン先生が言うこところの人間が勘違いするパターンみたいな意味かな)は、マーケッターにとっては都合のいい方向に働いてしまう可能性があるらしい。
具体的には、ある製品を購入する時にはなーんにも考えてなかった人も、後になってその時のことを聞かれると、製品特徴をちゃんと理解してて、コミュニケーションもしっかり認知してたって勘違いしてるっぽい。
リアルタイムで調査すると、みんなその製品の事なんて気にしてなくて、価格だけを重視して買ってるのに、しばらく使った後で、初めて買った理由とかの同じ質問すると、買う前に興味を持ってて、特徴を理解して買ったって答えるんだよね。
調査結果を見ると、おー、しっかりコミュニケーションできてるし、製品特徴も訴求できてるじゃん、って思うんだけど、それは、しばらく製品を使ってることで、過去の記憶が書き換えられてるって可能性があるんだよね。
これは製品購入理由に関することだけと、他にもその時の経験と、後になっての記憶が乖離しているケースって少なくないと思うわけですよ。
やはり、その時に取るべきデータは、その時に取るべきなんだと思う。
センサー技術のハードと、データ分析のソフトが直面のハードル
とは言え、リアルタイムデータをちゃんと扱おうとすると、当面はいくつか超えるべきハードルがあると思う。
- リアルタイムを捕らえるためのセンサー技術をあつかうスキルセット
- 日常的な消費行動に極力影響を与えないような限定的な聴取からインサイトにつなげていくスキルセット
- 属性データになっているセンシングデータをあつかうデータ分析のスキルセット
ただし、リコールするべきデータは、リコールされるべき
ただし、すべてをリアルタイムで聴取することが正しくて、全てのリコールデータが無意味だという事ではないと思う。
購入理由をとっても、購入スパンがすごく長いようなものとかは、過去の経験を思い出して色々考えるだろうし、ブランドや企業に対する態度なんかはリコールデータの方がいいのではないかなーと思う。
つまりは、今まではリコールデータとしてしか経験も記憶も聴取する事が出来なかったけど、これからは経験として聴取するべきものと、記憶として聴取するべきものを分けて考えなくちゃいけなくなるんじゃないかな。